コンテンツにスキップ

真空容器

真空容器(vacuum vessel)は、核融合炉においてプラズマを閉じ込める容器であり、ブランケットやダイバータなどの炉内構造物を支持する炉構造の骨格です。トカマク型核融合炉ではトーラス形状の真空容器が採用されます。

真空容器には4つの主要機能があります。

真空境界: プラズマと壁の相互作用で不純物が発生すると放射損失が増大するため、真空度は 10^-5 Pa 以下(超高真空)が必要です。ITER では年間 0.3 cm3 以下という厳しいリーク率が要求されます。

構造支持: ブランケット、ダイバータ、シールドなどの炉内構造物を支持します。ITER ではこれらの総重量が約 8,000 トンに達します。ディスラプション時には数百 MN の電磁力が瞬時に発生するため、強固な構造が必要です。

放射線遮蔽: D-T 反応で発生する 14 MeV 中性子やガンマ線から超伝導コイルを保護します。ボロン入りステンレス鋼が熱中性子吸収に使用されます。

安全障壁: トリチウムを含む放射性物質を閉じ込める多重防護の一翼を担います。冷却材漏洩事故や真空喪失事故時にも閉じ込め機能を維持します。

主要構造材は SUS316L(N)-IG(ITER Grade ステンレス鋼)で、窒素添加による強度向上とコバルト低減による放射化抑制が特徴です。将来炉では低放射化フェライト鋼(RAFM)の適用が検討されています。

ITER は内壁と外壁からなるダブルウォール構造を採用し、壁間にリブを連結して剛性を確保します。壁厚は内圧荷重、電磁力、重力荷重、熱応力を考慮して決定され、ITER では 60 mm が採用されています。

ITER には上部 18、赤道面 17、下部 9 の計 44 個のポートがあり、加熱装置、計測機器、保守アクセスに使用されます。

ディスラプション時にはハロー電流(プラズマ電流の最大 40%)と渦電流が発生し、局所的に数 MN/m の電磁力が作用します。ITER は約 50 MN の側方力に耐える設計です。

超高真空達成のため 200℃ のベーキング(加熱脱ガス)を実施します。さらにグロー放電洗浄やボロナイゼーション(壁へのボロン膜形成)により、プラズマ運転に適した壁条件を整えます。

高さ 11.3 m、大半径 6.2 m、総重量約 11,000 トン(ポート込み)の世界最大規模です。9 セクタに分割製作され、電子ビーム溶接と TIG 溶接により現地で接合されます。運転後は線量率が数百 Gy/h に達するため、全ての保守作業を遠隔操作で行います。