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材料・工学

核融合は「プラズマを閉じ込める挑戦」であると同時に、「材料への挑戦」でもあります。1 億度のプラズマを生み出せても、それを取り囲む壁がもたなければ発電所にはなりません。このセクションでは、核融合炉の内壁がどんな環境に置かれ、なぜ普通の金属では務まらないのかを、高校レベルからやさしく学んでいきます。

なぜ材料が最大級の難所なのか

Section titled “なぜ材料が最大級の難所なのか”

核融合炉の壁は、二つの過酷さに同時に耐えなければなりません。一つは熱です。プラズマから流れ込む熱を受け止める部分では、ロケットエンジンの内面に匹敵する熱流束がかかります。

もう一つが、核融合ならではの中性子です。重水素と三重水素(D-T)の反応では、14.114.1 MeV という高いエネルギーを持つ中性子が飛び出します。この中性子は電気を帯びていないので磁場では止められず、壁の奥深くまで入り込み、材料をつくる原子を本来の位置からはじき飛ばします。

このはじき飛ばしの量を数える尺度が、はじき出し損傷(dpa: displacements per atom)です。11 dpa は「材料中の原子が平均して 1 回、居場所から叩き出された」ことを意味します。核融合炉の壁では運転を続けるうちに数十 dpa に達し、金属はもろくなっていきます。これを照射脆化(irradiation embrittlement)と呼びます。つまり材料選びとは、この中性子の攻撃にどれだけ長く耐えられるかの勝負なのです。

このセクションは、炉全体の仕組みを知っていると理解が深まります。まだの方は先に 炉工学 を読み、第一壁やダイバータが炉のどこにあるのかをつかんでおくことをおすすめします。

次の順で読むと、内側から外側へと理解を積み上げられます。

  1. プラズマ対向材料: プラズマに直接さらされる最前線の壁を扱います。なぜタングステンやベリリウムが選ばれるのか、熱と粒子の攻撃にどう耐えるのかを学びます。
  2. 核融合炉の構造材料: 壁の後ろで炉を支える骨格の材料です。中性子を浴びても放射化しにくい低放射化鋼や SiC 複合材など、長期間の照射に耐える工夫を学びます。

まずはこのページで「熱」「中性子」「dpa」「照射脆化」という共通のキーワードをつかんでから、各ページへ進んでください。