放射性廃棄物
核融合炉では DT 反応で発生する 14.1 MeV 中性子が構造材を放射化しますが、核分裂炉とは根本的に異なる廃棄物特性を持ちます。
核分裂炉との本質的な違い
Section titled “核分裂炉との本質的な違い”核分裂炉では、ウランの核分裂により長寿命のアクチノイド(プルトニウム、アメリシウムなど)が生成されます。これらは半減期が数万年に及び、深地層処分と数万年以上の管理が必要です。
核融合炉では核分裂反応が起こらないため、アクチノイドは生成されません。燃料の重水素とトリチウムは原子番号 1 の軽元素であり、構造材も鉄やタングステンなどウランより軽い元素で構成されるため、超ウラン元素の生成は物理学的に不可能です。
放射性廃棄物はすべて中性子照射による構造材の放射化に起因し、低レベル廃棄物に分類されます。低放射化材料を使用することで、100 年程度の冷却で天然ウラン鉱石レベルまで減衰します。
放射化のメカニズム
Section titled “放射化のメカニズム”14 MeV 中性子が材料中の原子核と相互作用し、核変換により放射性核種が生成されます。主な相互作用は弾性散乱、非弾性散乱、核反応です。
はじき出し損傷(dpa)により材料特性が劣化し、照射脆化やスエリングが発生します。核融合炉の構造材は運転期間中に 150-200 dpa の損傷を受けます。
主要な放射化核種として、Fe-55(半減期 2.7 年)、Mn-54(312 日)、Co-60(5.27 年)があり、いずれも比較的短い半減期を持ちます。長寿命核種を生成する Nb、Mo、Ni、Co は低放射化材料から排除されます。
低放射化材料
Section titled “低放射化材料”低放射化フェライト鋼(RAFM 鋼)が核融合炉構造材の第一候補です。日本の F82H や欧州の EUROFER97 が代表的で、モリブデンをタングステンで置換し、不純物を厳格に管理しています。100 年冷却後の放射能は従来の 316SS の 1/100 に抑えられます。
より高い使用温度が求められる場合は ODS 鋼(酸化物分散強化鋼)、極めて低い放射化が必要な場合はバナジウム合金や SiC/SiC 複合材料が候補となります。
廃棄物管理と処分
Section titled “廃棄物管理と処分”核融合炉廃棄物は浅地中処分で対応可能であり、深地層処分は不要です。適切な冷却期間を設けることで、大部分がクリアランスレベル以下またはリサイクル可能となります。
1 GWe 核融合発電プラントの 40 年運転後、廃棄物量は約 10,000 トンと推定されますが、100 年冷却後には 70% 以上がクリアランスまたはリサイクル可能です。処分費用は核分裂炉の 1/5 程度と見積もられています。
ITER では廃止措置計画が策定されており、運転終了から約 20 年でサイト修復を完了する予定です。
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