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ブランケット

ブランケットは、核融合炉においてプラズマを「毛布のように包む」機器で、トリチウム増殖、エネルギー変換、中性子遮蔽の3機能を担います。D-T 反応で発生する 14.1 MeV の高エネルギー中性子の大部分はブランケットで減速・吸収され、熱に変換されます。

トリチウムは天然にほとんど存在せず、半減期も 12.32 年と短いため、核融合炉は自らトリチウムを生産する必要があります。ブランケット内のリチウムと中性子の核反応によりトリチウムが生成されます。

D-T 核融合エネルギーの約 80% は中性子が担っており、ブランケット内で熱に変換して発電に利用します。また、高エネルギー中性子およびガンマ線から超伝導コイルなどの外部機器を保護する遮蔽機能も果たします。

リチウム 6 と中性子の反応がトリチウム生成の主要経路です。Q 値 +4.78 MeV の発熱反応で、熱中性子でも反応可能です。リチウム 7 の反応は閾値 2.47 MeV 以上で進行し、反応後にも中性子が残るため中性子増倍効果があります。

トリチウム増殖比(TBR)1.05 以上が設計目標とされます。これは放射性崩壊による年間約 5.5% の損失、燃料処理系での損失、将来炉への燃料供給分を補うためのマージンです。

TBR 達成のため、ベリリウムや鉛による中性子増倍を利用します。ベリリウムは閾値 1.85 MeV で (n,2n) 反応を起こし、最も効率的な増倍材ですが、資源制約や毒性の課題があります。鉛は反応閾値が高い(6.7-8.4 MeV)ものの、資源が豊富でリチウムとの合金で使用できます。

ヘリウム冷却は化学的に不活性で中性子吸収が極めて小さい利点がありますが、低熱伝達率のため高流速が必要です。水冷却は軽水炉技術の蓄積を活用できますが、発電効率が制限されます。液体金属(リチウムまたは Li-Pb 合金)は増殖材を兼ねられますが、強磁場中での MHD 効果による圧力損失が課題です。

欧州は HCPB(ヘリウム冷却ペブルベッド)と WCLL(水冷却リチウム鉛)を開発中です。日本は WCCB(水冷却セラミック増殖)を基本概念としています。いずれも低放射化フェライト鋼を構造材とし、TBR 1.05-1.15 を目標としています。

ITER では専用ポートにテストブランケットモジュール(TBM)を設置し、核融合環境下での増殖ブランケット性能を検証します。日本、欧州、中国、韓国、インドがそれぞれ独自の TBM を開発しています。2035 年頃からの D-T 運転期に本格的なトリチウム増殖試験が行われる予定です。

構造材には F82H(日本)や EUROFER97(欧州)などの低放射化フェライト鋼が候補です。照射後 100 年で素手での取り扱い可能なレベルまで放射能が減衰することを目標としています。増殖材のトリチウム放出特性、ベリリウムの照射スエリングなど、長時間照射での材料健全性確認が重要な課題です。