コンテンツにスキップ

SPARC

SPARC は、MIT プラズマ科学核融合センター(PSFC)と Commonwealth Fusion Systems(CFS)が共同開発中の高温超伝導(HTS)マグネット採用のコンパクトトカマク型核融合実験炉です。名称は「Soonest/Smallest Private-funded Affordable Robust Compact」に由来します。

MIT は 1970 年代から Alcator シリーズで高磁場トカマク研究を積み重ねてきました。2016 年に Alcator C-Mod が運転終了した後、2018 年に CFS が設立され、民間資金による迅速な核融合開発が始まりました。

SPARC の主要目標は核融合利得 Q > 2(設計値)、最終的に Q > 10 の達成です。これにより、アルファ粒子自己加熱が支配的な燃焼プラズマ領域の物理研究が可能になります。

パラメータ
プラズマ大半径1.85 m
プラズマ小半径0.57 m
軸上磁場12.2 T
プラズマ電流8.7 MA
核融合出力50-100 MW
パルス持続時間10 秒
総重量約 1,000 トン

ITER(大半径 6.2 m、磁場 5.3 T)と比較すると、体積は約 1/70 ながら、核融合出力密度は 14 倍に達します。

従来の低温超伝導体(NbTi、Nb3Sn)は磁場強度に限界がありましたが、REBCO 系 HTS は 20 K 運転で 100 T 超の上部臨界磁場を持ちます。CFS が開発した VIPER ケーブルは REBCO テープを銅製ジャケットに収めた構造で、高電流密度と熱的安定性を両立しています。

2021 年 9 月、CFS はトロイダル磁場コイルの実寸プロトタイプで 20 T を達成し、HTS マグネットの核融合炉規模での実用性を実証しました。

核融合出力密度はベータ値と磁場の関係から B の 4 乗に比例します。磁場を 2 倍にすれば、同じベータ値で出力密度は 16 倍になります。この関係が高磁場コンパクトトカマクの設計根拠です。

主要加熱は 25 MW の ICRH(イオンサイクロトロン共鳴加熱)です。約 30 種類の診断装置を備え、機械学習ベースのディスラプション予測とシャッタードペレット注入による緩和システムを実装します。

マサチューセッツ州デベンズで組立が進行中です。2021 年に 18 億ドル、2025 年に 8.6 億ドルを追加調達し、累計約 30 億ドルを確保しています。2025 年 4 月にクライオスタットベースを設置、同年 10 月に真空容器が納入されました。2026 年に初プラズマ、2027 年に Q > 1 実証を予定しています。

SPARC の成功を受けて建設される商用炉が ARC(Affordable, Robust, Compact)です。大半径 3.3 m、核融合出力 525 MW、電気出力約 200 MW、定常運転を目指します。FLiBe 溶融塩ブランケットでトリチウム自給を実現する設計です。

2025 年に Google との 200 MW 電力購入契約、Eni との 10 億ドル規模供給契約を締結しました。バージニア州チェスターフィールド郡に建設予定で、2030 年代初頭の運転開始を目標としています。

SPARC は高磁場コンパクトアプローチの有効性を実証し、民間主導の迅速な核融合開発モデルを示すプロジェクトです。ITER との相補的な役割を果たしながら、商用核融合発電への代替経路を切り開いています。