コンテンツにスキップ

ローソン条件

ローソン条件は、1957年に英国の物理学者 J.D. Lawson が導出した、核融合炉が自己持続的にエネルギーを生み出すために必要なプラズマパラメータの条件である。核融合研究における最も重要な指標の一つとして、半世紀以上にわたり開発進捗の指標として使われている。

核融合炉の成立には、プラズマへの入力パワー(外部加熱、アルファ粒子加熱)が損失パワー(熱伝導、制動輻射)を上回る必要がある。この条件を密度 n と閉じ込め時間 tE の積で表したものがローソン条件である。

Q は核融合出力と外部加熱パワーの比で定義される。Q=1 は科学的ブレークイーブン(投入パワーと核融合出力が等しい状態)、Q=10 は ITER の目標値、Q が無限大となるのが点火条件(外部加熱なしで反応が持続する状態)である。経済的な発電炉には Q が20-30以上必要と見積もられている。

実用的には密度 n、温度 T、閉じ込め時間 tE の積である三重積 nTtE がプラズマ性能の総合指標として用いられる。点火条件は約 3x10^21 m^-3・s・keV である。

各因子の物理的意味は以下の通り。密度は反応頻度を決定し、温度は反応の質(クーロン障壁を乗り越える能力)を決定し、閉じ込め時間はエネルギー保持能力を表す。DT 反応では温度 10-20 keV が最適範囲となる。

三重積は過去50年で約10桁改善された。1968年のソ連 T-3 トカマクでの約 10^18 m^-3・s・keV から、1990年代には JT-60U が約 1.5x10^21 m^-3・s・keV を達成し、ブレークイーブン条件に迫った。JET は1997年に Q=0.67 を記録している。

トカマクは現在最も進んだ方式で、装置サイズ拡大と H-mode 運転により閉じ込め改善を図る。ステラレータは定常運転に有利だが開発は遅れている。慣性閉じ込めでは面密度 rhoR が3 g/cm^2 以上必要で、NIF は2022年に科学的ブレークイーブンを達成した。

ITER は Q=10(核融合出力500MW)を目指す。次段階の DEMO では Q が25-50、定常運転、300-500MW の正味発電が要求される。高温超伝導マグネットによる高磁場化で装置のコンパクト化を図る SPARC などの新アプローチも進行中である。