慣性閉じ込め核融合
慣性閉じ込め核融合(ICF)は、燃料ペレットをレーザーや粒子ビームで急速に圧縮・加熱し、燃料自身の慣性で核融合反応時間を確保する方式である。
磁場閉じ込めが低密度・長時間閉じ込めであるのに対し、ICF は超高密度・極短時間閉じ込めという戦略をとる。固体密度の1000倍以上に圧縮することで、約100ピコ秒という極めて短い時間でも十分な核融合反応を実現する。
ICF では面密度が重要なパラメータとなる。点火には約0.3 g/cm2以上の面密度が必要で、これはアルファ粒子が燃料中でエネルギーを堆積するための条件である。
ICF の過程は4段階に分けられる。(1)アブレーション: レーザー照射で表面物質がプラズマ化し噴出、(2)ロケット効果: 噴出の反作用で燃料が内向きに加速、(3)爆縮: 燃料が中心に収束し密度が上昇、(4)点火と燃焼伝播: 中心部でホットスポットが形成され核融合が開始。
直接照射はレーザーを燃料に直接照射する方式で、エネルギー結合効率が高い(10-15%)が、照射一様性の要求が厳しい。間接照射はホーラム(金属容器)内でX線に変換してから燃料を圧縮する方式で、一様性は良好だが効率は低い(1-5%)。
NIF(米国)は192本のレーザービームで最大2.2 MJを出力する世界最大の施設。LMJ(フランス)、OMEGA(米国)、激光XII号(日本)なども重要な研究拠点である。
2022年 NIF 点火達成
Section titled “2022年 NIF 点火達成”2022年12月、NIF で人類史上初の核融合点火が達成された。2.05 MJ のレーザー入力に対し3.15 MJ の核融合出力を得た(Q=1.54)。その後も複数回の点火に成功し、2024年には5.2 MJ 以上の出力を記録している。
発電炉への課題
Section titled “発電炉への課題”点火達成は歴史的成果だが、発電炉実現には課題が多い。ターゲット利得は現状の1.5から50-100への向上、ドライバー効率は1%から10-20%への改善、繰り返し率は1日数回から毎秒10回以上への飛躍が必要である。ターゲット製造コストも数万ドルから数十セントへの大幅な低減が求められる。