プラズマ加熱システム
核融合炉では、プラズマを1億度以上に加熱するために、複数の加熱システムを組み合わせて使用します。加熱の物理原理についてはプラズマ加熱の原理を参照してください。
オーム加熱の限界
Section titled “オーム加熱の限界”トカマクではプラズマ電流によるオーム加熱が基本的な加熱方式です。しかし、プラズマの電気抵抗率は温度上昇に伴い急激に低下するため、オーム加熱のみで到達できる温度は約 2-3 keV が限界です。核融合に必要な 10 keV 以上の温度には追加熱が不可欠となります。
中性粒子ビーム入射(NBI)
Section titled “中性粒子ビーム入射(NBI)”高エネルギーの中性水素原子をプラズマに入射し、荷電交換反応によってイオン化された後にプラズマを加熱する方式です。磁場を横切ってプラズマ中心部まで到達できるため、効率的な体積加熱が可能です。
システムはイオン源、加速部、中性化セル、残留イオン偏向磁石、ビームダンプ、ドリフト管から構成されます。正イオン NBI では 50-150 kV の加速電圧を使用しますが、エネルギーが 100 keV を超えると中性化効率が 30% 以下に低下するため、ITER のような大型装置では負イオン NBI が必要となります。
負イオン源では、セシウム添加により表面仕事関数を低下させ、負イオン生成効率を向上させます。ITER NBI は 1 MeV のビームエネルギー、33 MW の入射パワー、約 27% の壁プラグ効率で設計されています。
電子サイクロトロン加熱(ECRH)
Section titled “電子サイクロトロン加熱(ECRH)”電子のサイクロトロン周波数に同調したミリ波(100-200 GHz)を入射し、共鳴的にエネルギーを電子に付与する方式です。
高周波源にはジャイロトロンを使用します。電子銃から放出された電子ビームを強磁場中で回転運動させ、空洞共振器内で電磁波に変換します。CVD ダイヤモンド窓の開発により 1 MW 連続運転が可能となりました。エネルギー回収型ジャイロトロンでは 50% 以上の効率を達成しています。
波長が短い(約 1.8 mm)ため局所的な加熱が可能であり、新古典テアリングモードなどの MHD 不安定性制御に有効です。ITER では 170 GHz、20 MW の入射パワーで計画されています。
イオンサイクロトロン加熱(ICRH)
Section titled “イオンサイクロトロン加熱(ICRH)”イオンのサイクロトロン周波数帯(20-100 MHz)の電磁波を入射し、イオンを直接加熱する方式です。少数イオン種を用いた基本波加熱や、第2高調波加熱などの方式があります。
高周波源にはテトロード(四極真空管)を用いた増幅回路を使用し、60-70% の変換効率を達成しています。アンテナはトーラスの低磁場側に設置され、ループ状の放射ストラップとファラデーシールドから構成されます。ITER では 40-55 MHz、20 MW で設計されています。
低域混成波(LHCD)
Section titled “低域混成波(LHCD)”GHz 帯の電磁波を用いて主に電流駆動を行う方式です。電流駆動効率が高いことが特徴ですが、高温プラズマでは周辺部で吸収されるため中心部への浸透が困難です。高周波源にはクライストロンを使用し、グリルアンテナから入射します。主に周辺電流分布の制御に適用されます。
各方式の比較
Section titled “各方式の比較”| 方式 | 主な付与先 | 主な用途 |
|---|---|---|
| NBI | イオン/電子 | 主加熱、回転駆動、電流駆動 |
| ECRH | 電子 | 加熱、NTM 制御、起動補助 |
| ICRH | イオン | イオン加熱、少数イオン加熱 |
| LHCD | 電子 | 電流分布制御 |
ITER では NBI(33 MW)、ECRH(20 MW)、ICRH(20 MW)を組み合わせて合計 73 MW 以上の加熱パワーを実現します。
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