プラズマ加熱の原理
D-T核融合反応を持続させるには、プラズマを約1億度(10 keV)以上に加熱する必要があります。量子力学的トンネル効果により、クーロン障壁を完全に越えるエネルギーがなくても反応は起こりますが、十分な反応率を得るには高温が不可欠です。
オーミック加熱
Section titled “オーミック加熱”トカマクでは、中心ソレノイドの磁束変化によりプラズマ電流が誘導され、電気抵抗によるジュール熱でプラズマが加熱されます。しかし、プラズマの電気抵抗率(スピッツァー抵抗率)は温度の3/2乗に反比例するため、高温になるほど加熱効率が低下します。オーミック加熱のみで到達可能な温度は2-3 keV程度であり、核融合には追加熱が不可欠です。
中性粒子ビーム入射(NBI)
Section titled “中性粒子ビーム入射(NBI)”高エネルギーの中性原子ビームをプラズマに入射し、プラズマ中でイオン化された後、クーロン衝突でエネルギーを伝達する方式です。荷電粒子は磁場で偏向されるため、イオンを加速した後に中性化してから入射します。
正イオン源は50 keV/amu以上で中性化効率が急落するため、ITERのような大型装置では負イオン源(1 MeV級)を使用します。接線入射により電流駆動やプラズマ回転の付与も可能で、MHD安定性や乱流抑制に寄与します。
イオンサイクロトロン共鳴加熱(ICRH)
Section titled “イオンサイクロトロン共鳴加熱(ICRH)”磁場中のイオンはサイクロトロン周波数で回転運動します。この周波数帯(数十MHz)の電磁波を入射し、共鳴によりイオンを直接加熱します。単一イオン種では吸収が弱いため、少量の異種イオン(水素やヘリウム3)を添加する少数イオン加熱が一般的です。
電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)
Section titled “電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)”電子サイクロトロン周波数帯(100-170 GHz)のミリ波で電子を加熱します。ジャイロトロンと呼ばれる大出力ミリ波源(1-2 MW級)を使用し、磁場強度に応じた位置で共鳴が起こるため、加熱位置を精密に制御できます。この特性を活かし、新古典ティアリングモード(NTM)の局所的な抑制など、MHD不安定性制御に有効です。
低域混成波加熱(LHW)
Section titled “低域混成波加熱(LHW)”イオンと電子のサイクロトロン周波数の中間(1-5 GHz)の電磁波を使用します。電子との相互作用で吸収され、特に電流駆動効率が高い(0.1-0.3 A/W/m2)のが特長です。ただしプラズマ中心部への浸透が困難なため、周辺部の電流分布制御に適しています。
アルファ粒子自己加熱
Section titled “アルファ粒子自己加熱”D-T反応で生成される3.5 MeVのアルファ粒子は磁場に閉じ込められ、クーロン衝突でプラズマを加熱します。アルファ加熱のみで損失を補えれば「点火」となり、外部加熱なしで燃焼が持続します。ITERの目標Q=10は、50 MW投入に対し500 MWの核融合出力を意味します。
各方式の使い分け
Section titled “各方式の使い分け”NBIとICRHは主にイオン加熱、ECRHとLHWは電子加熱に適します。電流駆動効率はLHCDが最高ですが中心への浸透が困難で、ECCDは局所制御に優れます。実際の装置では目的に応じて複数方式を組み合わせ、ITERでは計73 MW(NBI 33MW、ICRH 20MW、ECRH 20MW)の加熱システムを備えます。