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第一壁

第一壁(First Wall)は、核融合炉において炉心プラズマに最も近い位置にある壁面である。プラズマからの放射と粒子を直接受け止め、ブランケットを保護しながら熱エネルギーを回収する。

第一壁はスクレイプオフ層の磁気面に沿って設置され、以下の機能を持つ。

  • 中性子のエネルギーを最初に受け止める
  • プラズマからの電磁波放射(制動放射、シンクロトロン放射など)を受熱する
  • 荷電交換反応で生じた中性粒子を受け止める
  • ブランケットのプラズマ側表面として、トリチウム増殖比への影響を最小化する
  • プラズマに混入する不純物量を抑制する

ITER の第一壁では、表面熱負荷 0.25-0.5 MW/m2、中性子壁負荷 0.5-0.8 MW/m2 が設計条件となる。

ITER の第一壁表面材料として採用。原子番号 4、融点 1287 度C。低原子番号によりプラズマ混入時の放射損失が小さく、酸素ゲッター効果を持つ。課題は融点の低さと毒性。

高熱負荷領域で使用。原子番号 74、融点 3422 度C。金属中で最も高い融点を持ち、スパッタリング損耗も少ない。高原子番号のためプラズマ混入時の放射損失が大きく、濃度を 10-5 以下に抑える必要がある。

クロムジルコニウム銅(CuCrZr)が ITER で使用される。将来炉向けには低放射化フェライト鋼(F82H、EUROFER97)が開発中。

ITER では水冷式(4 MPa、70-120 度C)を採用。発電炉向けには熱効率向上のためヘリウムガス冷却(8-10 MPa、300-500 度C)が検討されている。

スパッタリングとエロージョン

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プラズマ粒子が第一壁に衝突すると、運動量移行により表面原子がはじき出される(物理スパッタリング)。ベリリウムの閾値は約 10 eV と低いが、タングステンでは約 300 eV と高い。スパッタリングで放出された原子は別の場所に再堆積し、混合層を形成する。

中性子照射により材料原子が格子位置からはじき出される。損傷量は dpa(displacement per atom)で表され、発電炉では寿命中に 100-300 dpa の損傷が予測される。照射欠陥が転位運動の障害となり硬化・脆化が進行し、延性-脆性遷移温度が上昇する。

ITER の第一壁は総表面積 680 m2、440 のブランケットモジュールで構成される。層構造はベリリウムアーマー(8-10 mm)、CuCrZr ヒートシンク(10 mm)、316L(N) ステンレス鋼構造(20 mm)。遠隔保守システムにより交換され、DT 運転期間中に 1-2 回の全面交換が計画されている。

発電炉では中性子壁負荷が 2-5 MW/m2 に増大し、年間稼働率も 80% が目標となる。高照射量域での材料挙動予測、ODS 鋼や SiC/SiC 複合材料などの先進材料開発、液体金属第一壁などの先進概念が研究されている。