ダイバータ
ダイバータは核融合炉においてプラズマからの熱と粒子を処理し、不純物を制御する機器である。磁場配位を工夫してプラズマ粒子を特定の場所に導き、排気と熱処理を行う。
ダイバータには3つの主要な役割がある。
不純物制御では、スパッタリングにより発生する壁材料粒子がプラズマに混入することを防ぐ。不純物はプラズマのエネルギーを放射損失として奪うため、ダイバータを主プラズマから離れた位置に設置することで混入を抑制する。
ヘリウム灰の排気では、DT反応で生成されるアルファ粒子が減速後にプラズマ内に蓄積するのを防ぐ。ヘリウムは燃料を希釈するため、効率的な排気が必要である。定常炉ではヘリウム濃度5%以下が目標とされる。
熱処理では、主プラズマからスクレイプオフ層を通じて輸送される熱をダイバータ板で受け止め、冷却系に伝達する。核融合炉ではこの熱負荷が非常に大きく、設計上の最大課題となっている。
トカマクのプラズマは閉じた磁気面と開いた磁気面に分けられる。閉じた磁気面の最外殻をセパラトリクスと呼び、その外側をスクレイプオフ層と呼ぶ。セパラトリクスが形成される点がXポイントであり、ここでポロイダル磁場がゼロになる。
シングルヌル配位はXポイントが1つだけ存在する基本的な配位で、構造が簡素で保守が容易である。ダブルヌル配位は上下にXポイントを持ち、熱負荷を4つのダイバータ足に分散できるが、制御が困難である。ITERではシングルヌルが採用されている。
スクレイプオフ層の熱流束幅は数mm程度と狭く、ITERでは約1mmと予測される。この狭い領域に100MW級の熱が集中するため、ダイバータ板への熱流束は材料限界を超える。
デタッチメント運転は熱負荷を低減する運転モードである。ダイバータプラズマの温度を数eV以下まで下げると、放射やリサイクリングによりエネルギーが分散される。窒素やアルゴンなどの不純物ガス入射による放射冷却も併用される。ITERでは95%以上の放射効率が必要とされる。
ELMはペデスタル領域のエネルギーが周期的に放出される現象で、瞬間的な大きな熱負荷をダイバータに与える。ディスラプション時には蓄積エネルギーが数msで放出され、熱流束は数GW/m2に達する。
タングステンダイバータ
Section titled “タングステンダイバータ”タングステンは融点3422度、高い熱伝導率、低いスパッタリング率を持ち、ダイバータのアーマ材として最も有望である。ITERではモノブロック構造が採用され、タングステンブロックの中心に銅合金の冷却管を貫通させている。
冷却には加圧水が用いられ、スワールテープ挿入により熱伝達を促進する。ITERダイバータは54個のカセットで構成され、定常運転で10MW/m2の熱負荷に耐える設計である。
スノーフレーク配位はXポイント近傍にポロイダル磁場がゼロとなる領域を広げ、熱流束幅を拡大する。スーパーX配位は外側ダイバータ足を大きく外側に伸ばし、熱流束を低減する。液体金属ダイバータは固体材料の損耗問題を回避する概念で、液体リチウムや液体スズが研究されている。
将来炉の課題
Section titled “将来炉の課題”DEMOではITERより高い熱負荷、連続運転、高い中性子フルエンスへの対応が求められる。中性子照射によりタングステンは脆化し熱伝導率が低下する。タングステン合金や先進製造技術の開発が進められている。