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プラズマの輸送

プラズマ輸送とは、粒子や熱が磁気面を横切って移動する現象である。核融合炉の閉じ込め性能を決定する中心的な物理過程であり、その理解と制御は核融合実現の鍵となる。

古典輸送は粒子間のクーロン衝突のみに起因する。一様磁場中の荷電粒子は衝突のたびにラーモア半径程度の距離を横切って移動し、拡散係数は D = v*rho^2 程度となる。しかし実験値は古典理論の約1万倍であり、この差が「異常輸送」問題の核心である。

新古典輸送はトーラス配位の効果を取り入れた理論である。トカマクでは磁場強度が空間的に変化するため、粒子は通過粒子と捕捉粒子に分類される。捕捉粒子はバナナ形状の軌道を描き、バナナ幅はラーモア半径の10-100倍に達する。新古典理論の重要な成果はブートストラップ電流の予測であり、圧力勾配により自発的にトロイダル電流が流れる。高ベータ運転では全電流の70%以上を占めることもあり、定常炉にとって極めて重要である。

実測される輸送の大部分は乱流に起因する。イオン温度勾配モード(ITG)はコア領域のイオン熱輸送を支配する不安定性であり、温度勾配が臨界値を超えると乱流が発達する。捕捉電子モード(TEM)は密度勾配で駆動され、電子温度勾配モード(ETG)は電子スケールで発達する。

乱流輸送には「臨界勾配」と「stiff transport」という特性がある。温度勾配が臨界値を超えると輸送が急増し、分布は臨界勾配付近に保たれる。このため加熱パワーを増やしても中心温度はあまり上昇せず、周辺温度(ペデスタル)が中心温度を決定する。

1982年、ASDEXトカマクでHモード(高閉じ込めモード)が発見された。加熱パワーが閾値を超えると、プラズマ周辺部に輸送障壁が形成され、閉じ込めが約2倍に改善する。主要メカニズムは径電場シアによる乱流抑制である。シアリング率が乱流成長率を超えると乱流セルが分断され、輸送が低下する。

Hモードではペデスタルと呼ばれる急峻な圧力勾配領域が形成される。ペデスタル高さは核融合炉の性能を直接決定する。一方、圧力勾配がMHD安定限界に達するとELM(周辺局在モード)が周期的に発生し、ダイバータへの熱負荷が問題となる。ITERではELM抑制技術が必須とされている。

内部輸送障壁(ITB)は負磁気シア配位や回転シアにより形成され、臨界勾配を大幅に超える勾配が達成される。

エネルギー閉じ込め時間は経験的スケーリング則で表される。Hモード標準スケーリングIPB98(y,2)はITER設計の基盤である。パワーデグラデーション(P^-0.69依存)は乱流輸送の性質を反映している。

輸送が小さいほど同じ加熱パワーで高性能が達成でき、装置サイズを縮小できる。閉じ込め改善因子Hが2倍になると必要な装置体積は約1/4となる。また高いブートストラップ電流割合は外部電流駆動を削減し、定常運転を可能にする。輸送現象の理解と制御は、核融合炉の経済性を決定する中心課題である。