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核融合炉の構造材料

核融合炉の構造材料には、100-200 dpa(原子あたりのはじき出し回数)の高フルエンス照射に耐える耐照射性、発電効率向上のための高温強度、炉停止後 100 年程度で浅地中処分可能な低放射化特性が同時に求められる。低放射化に適した元素は Si、V、Cr、Ti、Fe、C、W であり、Ni、Mo、Nb、Co は避けるべきとされる。

低放射化フェライト/マルテンサイト鋼(RAFM 鋼)

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RAFM 鋼は最も開発が進んだ候補材料で、従来の高クロムフェライト鋼から Mo、Nb、Ni を W、V、Ta で置換して低放射化を実現した。日本の F82H(8Cr-2W-V-Ta)、欧州の EUROFER97(9Cr-1.1W-V-Ta)、中国の CLAM などが開発されている。

マルテンサイト変態と焼戻し処理により、固溶強化、析出強化(M23C6 型炭化物)、転位強化、結晶粒微細化強化の複合機構で強度を達成する。使用温度範囲は下限 350-400 度C(照射による DBTT 上昇)、上限 550 度C(クリープ強度低下)である。溶接後は焼入れマルテンサイトが脆くなるため、720-760 度C での溶接後熱処理が必須となる。

ODS 鋼は RAFM 鋼に Y2O3 や Y2Ti2O7 のナノ酸化物粒子を分散させた先進材料である。機械的合金化法で製造され、Orowan 機構による分散強化で RAFM 鋼の 3-4 倍のクリープ強度を示す。9Cr-ODS は 700 度C、14Cr-ODS は 800 度C まで使用可能だが、製造コストが高く、大型素材製造や溶融溶接が困難という課題がある。

V-4Cr-4Ti 合金は 700 度C まで使用可能で、液体リチウムとの共存性に優れる。自己冷却ブランケット向けだが、酸素濃度を 200 ppm 以下に抑制する不純物制御と、強磁場中での MHD 圧力損失低減のための絶縁被膜開発が課題である。

SiC 繊維と SiC マトリックスの複合材料は 1000 度C 以上で使用可能で、50% 以上の発電効率を目指す将来炉向けである。Hi-Nicalon Type S や Tyranno SA3 などの第三世代繊維を用い、CVI 法や NITE 法でマトリックスを形成する。破壊靭性はモノリシック SiC の 5-10 倍に向上するが、気密性確保と接合技術が課題である。

14.1 MeV 中性子は欠陥カスケードを形成し、照射硬化、DBTT 上昇、スウェリング、照射クリープを引き起こす。核変換により He(RAFM 鋼で 10-12 appm/dpa)と H が生成され、550 度C 以上でヘリウム脆化が顕著となる。

材料照射試験は主に核分裂炉(HFIR、JOYO 等)で行われるが、中性子エネルギーと He/dpa 比が核融合環境と異なる。IFMIF-DONES は 40 MeV 重陽子ビームと液体リチウムターゲットで核融合中性子環境を模擬し、50 dpa/年の照射能力を持つ施設として 2030 年代の運転開始を目指している。