核融合反応の種類
核融合発電では、反応の種類によって必要温度、エネルギー収支、燃料調達の難易度が大きく異なる。
反応を起こす条件
Section titled “反応を起こす条件”原子核は正電荷を持つため、接近すると静電反発力(クーロン障壁)が生じる。D-T反応の場合、古典力学的には約67億ケルビンが必要だが、量子トンネル効果により実際は1-2億度で反応が起こる。軽い原子核ほどクーロン障壁が低く、トンネル確率も高いため、水素同位体が核融合に適している。
主要な核融合反応
Section titled “主要な核融合反応”D-T反応(重水素-三重水素)は現在の核融合研究の主流である。約1億2000万度で反応が起こりやすく、17.6 MeVのエネルギーを放出する。エネルギーの80%は中性子、20%はアルファ粒子が持ち去る。ITERをはじめ多くの計画がこの反応を採用している。
D-D反応は燃料が重水素のみで済む利点があるが、必要温度はD-Tの約5倍、反応率は約1/100である。D-He3反応は中性子を発生しない利点があるが、He3の入手が困難で、副反応のD-Dから中性子が発生する。
p-B11反応は完全な非中性子反応として注目されるが、約35億度という極端な高温が必要で、制動放射損失も大きく、現在の技術では実現困難である。
燃料の入手可能性
Section titled “燃料の入手可能性”重水素は海水中に0.015%含まれ、事実上無尽蔵である。1リットルの海水中の重水素は約300リットルのガソリンに相当するエネルギーを持つ。
トリチウムは半減期12.3年の放射性同位体で自然界にほぼ存在しない。核融合炉ではブランケット内でリチウムと中性子の反応により生成する。自己持続運転にはトリチウム増殖比1以上が必要である。
He3は地球上では極めて希少だが、月の表土には太陽風由来のHe3が蓄積しており、将来の資源として注目されている。
D-T反応は技術的ハードルが最も低く、現在の開発の中心である。ただし中性子による材料放射化とトリチウム管理の課題がある。先進燃料(D-He3、p-B11)は中性子問題を解決できるが、必要条件がはるかに厳しく、実現には技術的ブレークスルーが必要である。D-T反応は核融合発電実現への最初のステップであり、将来的には先進燃料への移行も期待されている。