国立点火施設(NIF)
国立点火施設(NIF)は、アメリカ・ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)に建設された世界最大のレーザー施設です。192本のレーザービームが500テラワットのエネルギーを直径数ミリメートルのターゲットに集中させます。
2022年12月5日、NIFは人類史上初めて制御された核融合で「科学的点火」を達成しました。2.05 MJのレーザー入力に対し、3.15 MJの核融合エネルギーを生成。出力が入力を上回る歴史的成果でした。
NIFの建設費35億ドル、年間運営費約3.5億ドルは、主に核兵器管理プログラムによって支えられています。冷戦後、地下核実験なしに核兵器の安全性を維持するため、NIFは実験室規模で熱核反応を再現する手段を提供しています。同時に、慣性閉じ込め核融合(ICF)によるエネルギー研究も進められています。
慣性閉じ込めの原理
Section titled “慣性閉じ込めの原理”ICFでは燃料を秒速350-400 kmで爆縮し、自らの慣性により約100ピコ秒間閉じ込めます。この極めて短い時間で核融合反応を完了させるため、燃料密度を固体の1000倍以上に高めます。NIFは「中心点火方式」を採用し、中心部に高温ホットスポットを形成。そこから燃焼波が外側に伝播します。
レーザーシステム
Section titled “レーザーシステム”初期パルスは約10の15乗倍に増幅されます。ネオジムをドープしたリン酸ガラス(3072枚、総重量78トン)が増幅媒質です。赤外線(1053 nm)はKDP結晶で紫外線(351 nm)に変換され、ターゲットに照射されます。ショット間隔は約8時間で、レーザーガラスの熱管理が制限要因です。
間接照射方式
Section titled “間接照射方式”レーザーは燃料カプセルに直接照射されず、「ホーラム」と呼ばれる金製円筒(長さ約10 mm、直径約5 mm)の内壁に照射されます。金プラズマが軟X線を放射し、均一な放射場が燃料カプセルを対称的に圧縮します。照射均一性に優れる一方、エネルギー変換効率は低下します。
2022年12月のショットでは、ホットスポット温度1.5億度(太陽中心の10倍)、圧力600ギガバール(太陽中心の2倍)を達成。燃焼率は約4%でした。その後も繰り返し点火に成功し、2024年12月には2.20 MJ入力で5.2 MJ出力(利得2.36)の新記録を達成しています。
発電炉への課題
Section titled “発電炉への課題”現在のNIFは1日数ショットですが、発電所には5-10 Hzの繰り返し率が必要です。また、ドライバー効率は現状0.5%に対し10-15%が必要です。ターゲットコストも1個10万ドルから0.5ドル以下への低減が求められます。これらは工学的課題であり、原理実証は完了しています。