大型ヘリカル装置(LHD)
大型ヘリカル装置(LHD:Large Helical Device)は、岐阜県土岐市の核融合科学研究所(NIFS)が運営する世界最大のヘリオトロン型装置です。1998 年の初プラズマ以来、ステラレータ/ヘリオトロン研究をリードしています。
LHD は L=2、M=10 のヘリオトロン配位を採用し、2 本の連続ヘリカルコイルがトーラスを 10 周して閉じ込め磁場を形成します。主要パラメータは大半径 3.9 m(可変 3.6-4.1 m)、平均小半径 0.6 m、プラズマ体積 30 立方メートル、最大磁場 3 T です。
超伝導ヘリカルコイルには NbTi/Cu 複合導体を使用し、4.4 K で運転されます。1 コイルあたり約 28 km の導体が 450 ターン巻かれ、運転電流は 11.4 kA、蓄積エネルギーは両コイル合計で約 0.76 GJ に達します。3 対 6 個のポロイダルコイルにより磁気軸位置を調整でき、内向きシフト配位(3.6 m)では良好な閉じ込め、外向きシフト(3.9 m)では大体積運転が可能です。
プラズマ加熱システム
Section titled “プラズマ加熱システム”NBI は負イオン源 2 系統(各 6 MW、180 keV)と正イオン源 2 系統(各 6 MW、40 keV)で構成され、合計約 24 MW を供給します。ECH は 77-84 GHz のジャイロトロン 9 基で約 5 MW、ICRF は 25-100 MHz で約 3 MW を供給し、総加熱パワーは最大約 30 MW と世界最高水準です。
世界記録の達成
Section titled “世界記録の達成”2017 年の重水素実験でイオン温度 1 億 2000 万度(約 10 keV)を達成し、ヘリオトロン配位として初めて核融合点火条件の温度を実現しました。電子密度は Super Dense Core モードで 1.2 x 10^21 /立方メートルと世界最高値を記録。定常運転では 47 分 38 秒間のプラズマ維持に成功し、総加熱エネルギー 3.36 GJ を実証しました。体積平均ベータは 5% を達成しています。
重水素実験と同位体効果
Section titled “重水素実験と同位体効果”2017 年 3 月に開始された重水素実験は、日本の核融合研究における画期的な前進でした。水素プラズマと比較してエネルギー閉じ込め時間が改善され、同位体スケーリング指数は 0.2-0.4 と測定されました。D-D 反応による中性子発生を伴う研究が進められ、トリチウム管理では年間生成量約 37 GBq に対し 1.5 TBq 以下の環境放出管理が行われています。
ステラレータ物理への貢献
Section titled “ステラレータ物理への貢献”LHD は 3 次元磁場配位特有の物理現象の解明に貢献しています。径電場の自発的形成では、電子ルート(正電場)とイオンルート(負電場)の遷移が観測されました。ブートストラップ電流は最大約 50 kA で、回転変換への影響は 10% 程度です。国際ステラレータスケーリング ISS04 の構築に重要なデータを提供し、閉じ込め改善因子は 1.0-1.5 を達成しています。
将来炉 FFHR への展望
Section titled “将来炉 FFHR への展望”NIFS はヘリカル型核融合炉 FFHR の概念設計を進めています。FFHR-d1 は大半径 15.6 m、核融合出力 3 GW、電気出力 1 GW を目標とし、コンパクト版 FFHR-c1 は大半径 10.4 m、電気出力 0.3 GW を想定しています。ヘリオトロン方式はプラズマ電流が不要なため、定常運転とディスラプションフリーという炉にとって重要な利点があります。高温超伝導コイルの採用も検討されており、REBCO 導体は冷却系の大幅な簡素化を可能にします。
LHD は四半世紀にわたる運転実績により、ステラレータ方式の有効性を実証し、将来の核融合エネルギー実現への道筋を示しています。