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JT-60SA

JT-60SA(Japan Torus-60 Super Advanced)は、現在稼働中の世界最大の超伝導トカマクです。茨城県那珂市の量子科学技術研究開発機構(QST)に設置され、ブローダーアプローチ協定に基づく日欧共同プロジェクトとして運営されています。2023 年 10 月に初プラズマを達成し、ITER への橋渡しとなる先進トカマク研究の中核装置として稼働を開始しました。

プラズマ大半径 2.96 m、小半径 1.18 m、アスペクト比 2.5 の装置です。プラズマ電流 5.5 MA、トロイダル磁場 2.25 T で運転され、超伝導マグネットにより最大 100 秒の長パルス運転が可能です。総重量約 2,800 トン、高さ約 16 m。18 基の TF コイル、6 基の EF コイル、4 モジュールの中心ソレノイドから成る超伝導マグネットシステムを備えています。

加熱システムは合計 41 MW を誇り、正イオン NBI(12 MW、85 keV)、負イオン NBI(10 MW、500 keV)、ECH(7 MW)で構成されます。負イオン NBI の 500 keV は、プラズマ中心部まで到達する高エネルギービームを生成し、JT-60U から継承した世界最先端の技術です。

前身の JT-60U(1991-2008 年運転)は核融合研究史上最高の成果を残しました。重水素プラズマで核融合三重積の世界記録を達成し、DT 換算の等価エネルギー増倍率 1.25 を記録。イオン温度 45 keV(約 5 億度)も達成しています。これらの記録は 2024 年現在も重水素プラズマとして世界最高値です。

JT-60U は常伝導コイルのため約 28 秒のパルス運転が限界でした。この制約を克服するため、JT-60SA では NbTi 超伝導マグネットを採用し、100 秒以上の運転を可能にしました。

2005 年に ITER 建設地がフランスに決定した際、日本の核融合研究を継続するためブローダーアプローチ協定が締結されました。JT-60SA はその中核プロジェクトです。

日本は真空容器、クライオスタット、CS コイル、NBI などを担当。欧州は TF コイル(イタリア製)、EF コイル、ECH システム(ドイツ製)などを提供しました。総事業費は約 500 億円(日欧合計)です。

2013 年に本格的な組立を開始し、2020 年 3 月に組立完了。しかし 2021 年 3 月、通電試験中に EF コイル接続部で絶縁破壊による短絡事故が発生しました。約 2 年間の修復作業を経て、2023 年 10 月 23 日に初プラズマを達成。この経験は ITER の建設にも活かされています。

JT-60SA は ITER の約 1/2 スケールで、物理的類似性が高いため研究成果を直接適用できます。主要な科学目標は以下の通りです。

高ベータ運転では規格化ベータ 4 以上を目指します。高ベータは核融合出力密度の向上につながり、経済的な発電炉設計に不可欠です。

定常運転では、ブートストラップ電流と NBI/ECH による電流駆動を組み合わせ、100 秒以上の完全非誘導運転を目指します。

ITER 支援として、H モード遷移条件、ELM 制御、ディスラプション予測と緩和技術の研究を先行して行います。

2024 年 12 月時点でプラズマ電流は約 3 MA まで増加し、H モード達成が視野に入っています。2025 年にフルパラメータ運転、2028 年頃に高ベータ目標の達成を予定しています。

JT-60SA は ITER と DEMO の橋渡し役として、核融合発電実現に向けた重要な知見を提供し続けます。