トリチウム
トリチウム(tritium、三重水素)は、陽子 1 個と中性子 2 個からなる水素の放射性同位体です。重水素と組み合わせて、現在最も実現に近い核融合反応の燃料として使われます。
やさしい定義(高校レベル)
Section titled “やさしい定義(高校レベル)”ふつうの水素は原子核に陽子が 1 個だけです。ここに中性子が 1 個くっついたものが重水素、2 個くっついたものがトリチウムです。同じ水素の仲間なのに、重りが増えて少しずつ重くなっていくイメージですね。
トリチウムは重い分だけ不安定で、時間がたつと自分から別の原子(ヘリウム 3)に変わっていきます。このとき小さな粒(電子)を放り出すので、放射性物質として扱われます。地球にはほとんど自然に存在しないので、核融合炉で使うには人の手で作り出す必要があります。
詳しい定義(学部レベル以上)
Section titled “詳しい定義(学部レベル以上)”トリチウム(tritium、記号 または T)は質量数 3 の水素同位体で、原子核は陽子 1 個と中性子 2 個で構成されます。半減期は約 12.3 年で、ベータ崩壊(β⁻ 崩壊)によりヘリウム 3 へと変わります。
この式は、トリチウムが電子と反電子ニュートリノを放出してヘリウム 3 になることを表します。放出されるベータ線のエネルギーは最大でも約 18.6 keV と低く、紙 1 枚や皮膚の角質層で止まる程度です。ただし体内に取り込まれると内部被曝の要因になるため、取り扱いには封じ込めが求められます。
トリチウムは宇宙線と大気の反応でごく微量が生成されるほかは、自然界にほぼ存在しません。したがって核融合炉の燃料として使うには、炉内で人工的に生産(増殖)する必要があります。
核融合における役割
Section titled “核融合における役割”現在最も反応させやすい核融合反応は、重水素(D)とトリチウム(T)を用いる D-T 反応です。約 1 億度のプラズマ中で D と T が融合すると、ヘリウム 4 と中性子が生じ、17.6 MeV のエネルギーを解放します。他の反応に比べて低い温度で高い反応率が得られるため、初期の核融合炉は D-T 反応を前提に設計されています。
問題は、トリチウムが自然界にほぼ存在せず半減期も短いことです。そこで炉を取り囲むブランケット内でリチウムに中性子を当て、トリチウムを生み出す増殖が不可欠になります。炉が消費する以上のトリチウムを作り出せるかどうかが、D-T 核融合炉が自立して動くための鍵となります。