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電磁流体力学

電磁流体力学(magnetohydrodynamics、MHD)は、プラズマを 1 つの電気を通す流体とみなし、流れと磁場が互いに及ぼし合う力を扱う理論です。核融合プラズマの平衡と安定性を調べる基礎になります。

プラズマは無数の荷電粒子の集まりですが、その 1 つ 1 つを追いかけるのは大変です。そこで、水や空気のように「全体で 1 つの流れる物体」とみなしてしまおう、という考え方が電磁流体力学です。ただし普通の水と違って、この流体は電気を通すので磁場の影響を強く受けます。

磁場の中では、流体は磁力線に糸を通されたビーズのように振る舞います。磁力線には「押し返す力」と「引き戻す力」の 2 種類があると考えると分かりやすいです。混み合った磁力線どうしが横に押し合う力が磁気圧、ぴんと張った磁力線が元に戻ろうとする力が磁気張力です。この 2 つの力とプラズマ自身の圧力がつり合ったとき、プラズマは安定して閉じ込められます。

詳しい定義(学部レベル以上)

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電磁流体力学は、流体の運動方程式にローレンツ力を組み込み、Maxwell 方程式と連立させて記述します。運動量の式は次のように書けます。

ρdvdt=p+J×B\rho \frac{d\mathbf{v}}{dt} = -\nabla p + \mathbf{J} \times \mathbf{B}

これは「密度 ρ\rho の流体が加速するのは、圧力勾配 p-\nabla p と、電流密度 J\mathbf{J} と磁束密度 B\mathbf{B} による力 J×B\mathbf{J} \times \mathbf{B} の和による」と読み下せます。

この力の項は磁気圧と磁気張力に分解できます。

J×B=(B22μ0)+(B)Bμ0\mathbf{J} \times \mathbf{B} = -\nabla \left( \frac{B^2}{2\mu_0} \right) + \frac{(\mathbf{B} \cdot \nabla)\mathbf{B}}{\mu_0}

第 1 項は磁気圧 B2/(2μ0)B^2/(2\mu_0) の勾配で、磁力線が横向きに押し合う効果を表します。第 2 項は磁気張力で、曲がった磁力線がまっすぐに戻ろうとする効果を表します。ここで μ0\mu_0 は真空の透磁率です。プラズマ圧力と磁気圧の比はプラズマベータ(β\beta)と呼ばれ、閉じ込め効率の指標になります。

核融合では、まずプラズマが安定に静止できる状態、すなわち MHD 平衡を求めることが設計の出発点になります。トカマクやステラレータの磁場配位は、この平衡がどんな形になるかを解いて決められます。さらに、その平衡がわずかな乱れに対して壊れないか、という MHD 安定性の解析が欠かせません。安定性を失うとプラズマは大きく変形し、トカマクではディスラプションのような急激な閉じ込め喪失につながります。単純化された近似ながら、電磁流体力学は装置設計と運転限界の見積もりを支える中心的な道具です。