H モード
H モード(H-mode、高閉じ込めモード)は、加熱を一定以上に強めたトカマクのプラズマ周辺に輸送障壁が自発的にでき、閉じ込め性能が急に高まる運転状態です。
やさしい定義(高校レベル)
Section titled “やさしい定義(高校レベル)”プラズマを温めていくと、ある加熱の強さを超えた瞬間に、プラズマの縁の部分が急に熱や粒子を逃がしにくくなる状態へ切り替わります。これが H モードです。魔法瓶の断熱層がプラズマの縁に自然にできるようなイメージで、同じ加熱でも中心の温度が段違いに高く保てるようになります。1982 年にドイツの ASDEX という装置で初めて発見され、それまでの普通の状態(L モード、低閉じ込めモード)と比べて閉じ込め時間がおよそ 2 倍になることから、核融合研究の流れを大きく変えました。
詳しい定義(学部レベル以上)
Section titled “詳しい定義(学部レベル以上)”H モード(H-mode、High-confinement mode)は、加熱パワーがしきい値(L-H 遷移パワー)を超えたときに、プラズマ最外周に幅の狭い輸送障壁(edge transport barrier)が形成される状態です。この障壁の内側で温度と密度が急峻に立ち上がった台地状の構造をペデスタル(pedestal)と呼びます。障壁は、プラズマ周辺に生じる径方向電場 のずり(シアー)が乱流渦を引きちぎり、乱流輸送を抑えることで維持されると理解されています。ペデスタルの高さは炉心の温度全体を底上げするため、閉じ込め性能を左右する重要な指標になります。反面、ペデスタル部の圧力勾配と電流が過大になると、周辺に周期的な不安定性が生じます。
核融合における役割
Section titled “核融合における役割”H モードは、同じ加熱入力でより高い温度と密度を実現できるため、ローソン条件の達成に直結する運転シナリオです。ITER をはじめとする次世代トカマクは H モードを標準の運転状態として設計されています。ただし H モードでは、ペデスタルに蓄えたエネルギーを短時間で放出する ELM(Edge Localized Mode、周辺局在モード)という不安定性が周期的に起き、放出された熱がダイバータを局所的に傷めます。閉じ込めを高める効果と、ELM による熱負荷というトレードオフをどう両立させるかが、現在の重要な研究課題です。