ダイバータ
ダイバータ(divertor)は、閉じ込めプラズマの最外周にある磁力線を専用の受け板へ導き、そこで熱流束と不純物、燃焼灰であるヘリウムを集中的に排出する装置です。
やさしい定義(高校レベル)
Section titled “やさしい定義(高校レベル)”1 億度のプラズマを閉じ込めても、外周の粒子はどうしても壁に触れてしまいます。そのまま容器全体で受け止めると壁が傷みますし、削れた壁の原子がプラズマに混ざって冷やしてしまいます。そこでダイバータは、外周の磁力線をわざと 1 か所へ引き寄せ、専用の頑丈な受け板だけに熱と汚れをぶつけます。台所の換気扇のように、汚れをまとめて 1 か所から追い出す排気口の役割です。
詳しい定義(学部レベル以上)
Section titled “詳しい定義(学部レベル以上)”ダイバータは、ポロイダル磁場コイルの電流でプラズマ断面の外側に磁気的なゼロ点である X 点(X-point)を作り出します。この X 点を境に、閉じた磁気面の一番外側の面をセパラトリクス(separatrix)と呼びます。セパラトリクスの外側の磁力線は閉じずにダイバータの受け板(ダイバータ板、target plate)へつながっており、この領域をスクレイプオフ層(scrape-off layer)と呼びます。
外周のプラズマはセパラトリクスの外へ拡散すると、磁力線に沿ってダイバータ板まで運ばれ、そこで熱と粒子を落とします。このため熱流束が受け板へ強く集中し、定常運転では 1 平方メートルあたり 10 MW を超える熱負荷を受け止める設計が求められます。
この負荷を下げる運転状態がデタッチメント(detachment、非接触プラズマ)です。ダイバータ近傍へ意図的に不純物ガスなどを入れて放射でエネルギーを散らし、受け板に届く前にプラズマの温度を下げて、板への熱流束と粒子束を大きく低減します。
核融合における役割
Section titled “核融合における役割”核融合反応で生じたヘリウム(燃焼灰)を排出できなければ、プラズマは希釈されて反応が止まってしまいます。ダイバータはこの灰と熱を安定して連続排出する要であり、同時に壁材が削れてプラズマへ混入する不純物を抑えます。ITER や将来の発電炉では、この熱流束集中とデタッチメント制御をどう両立するかが実現性を左右する中心課題の 1 つです。