ブランケット
ブランケット(blanket)とは、核融合炉の炉心プラズマを毛布のように取り囲む構造体で、核融合で生まれた中性子のエネルギーを熱として回収し、燃料となるトリチウムを増殖し、外側の機器を放射線から守る役割を持ちます。
やさしい定義(高校レベル)
Section titled “やさしい定義(高校レベル)”核融合反応で生まれるエネルギーの大半は、飛び出してくる中性子が持ち去ります。中性子は電気を帯びていないので磁場では止められず、プラズマの外へまっすぐ突き抜けていきます。この中性子を受け止めて、そのエネルギーを熱に変えてお湯を沸かすのがブランケットです。まさにプラズマにかぶせた毛布のような部品で、名前もそこから来ています。
さらにブランケットには、大切な役目がもう 1 つあります。核融合の燃料であるトリチウムは自然界にほとんど存在しないので、炉の中で自分で作り出す必要があります。ブランケットの中にリチウムを入れておくと、飛んできた中性子がリチウムに当たってトリチウムに変わります。燃料を燃やしながら、その場で次の燃料を作るという、とても巧みな仕組みです。
詳しい定義(学部レベル以上)
Section titled “詳しい定義(学部レベル以上)”ブランケット(blanket)は、重水素(D)と三重水素(トリチウム、T)の反応で放出される 14.1 MeV の中性子を主な対象として、次の 3 機能を同時に担う炉内構造体です。
熱回収では、中性子が構造材や増倍材と衝突して減速する際に生じる熱を冷却材(水、ヘリウム、液体金属など)で取り出し、発電に利用します。核融合反応 D + T → He(3.5 MeV)+ n(14.1 MeV)のうち、エネルギーの約 80 % を中性子が持ち去るため、発電量の大半はブランケットでの熱回収に依存します。
トリチウム増殖では、リチウムと中性子の反応でトリチウムを生成します。代表的な反応は次の 2 つです。
上の式は、リチウム 6 が中性子を吸収してヘリウムとトリチウムに分かれ、エネルギーを放出する反応を表します。下の式は、リチウム 7 が高速中性子と反応してトリチウムを作りつつ、中性子をもう 1 つ放出する反応です。増殖の性能はトリチウム増殖比(tritium breeding ratio、TBR)で表され、消費した 1 個のトリチウムに対して生成される個数を意味します。炉の自立運転には TBR が 1 を超えること、実際には損失や在庫を考慮して 1.05〜1.15 程度が必要とされます。TBR を高めるため、ベリリウムや鉛といった中性子増倍材を併用することがあります。
遮蔽では、減速しきれなかった中性子とガンマ線を吸収し、外側にある超伝導コイルなどの機器を放射線損傷や核発熱から守ります。
核融合における役割
Section titled “核融合における役割”ブランケットは、核融合炉を「実験装置」から「発電炉」へと変える中心部品です。エネルギーを取り出す唯一の主要な経路であり、同時に燃料を自給する装置でもあります。トリチウムは半減期が約 12.3 年と短く外部調達が困難なため、TBR を 1 以上に保てるブランケットの実現は、核融合を持続的なエネルギー源とするための必須条件となっています。高中性子束・高温という過酷な環境に耐える材料開発とともに、核融合工学における最大級の課題の 1 つです。