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核融合と核分裂の比較

核融合と核分裂は、どちらも原子核のエネルギーを利用しますが、その原理と特性は対照的です。

核子あたりの結合エネルギーは鉄付近で最大となります。この曲線から2つのエネルギー解放経路が導かれます。核融合は軽い原子核を結合させ、核分裂は重い原子核を分裂させることで、より安定な原子核へ移行し、その質量欠損分のエネルギーを放出します。

D-T核融合反応では17.6 MeVのエネルギーが放出され、ウラン235の核分裂では約200 MeVが放出されます。核融合は反応あたりのエネルギーは小さいものの、質量あたりのエネルギー密度では核分裂の約4倍に達します。

核分裂燃料であるウランは、現在の消費率で約100年分の埋蔵量があります。一方、核融合燃料の重水素は海水中に事実上無尽蔵に存在し、トリチウム生成用のリチウムも数億年分の資源量があります。

核分裂炉は連鎖反応で運転するため、制御を失うと暴走事故の可能性があります。停止後も崩壊熱が発生し、継続的な冷却が不可欠です。

核融合炉には連鎖反応が存在せず、プラズマが乱れると反応は自動的に停止します。炉内の燃料は数グラムのみであり、暴走は原理的に不可能です。

核分裂では、半減期が数万年に及ぶアクチノイドを含む高レベル廃棄物が発生し、深地層処分が必要です。核融合では直接生成物のヘリウムは無害であり、中性子による構造材の放射化が主な廃棄物源となります。低放射化材料を使用すれば、約100年で再利用可能なレベルまで減衰します。

核分裂技術はウラン濃縮やプルトニウム抽出を通じて核兵器製造に転用可能です。核融合技術ではこうした核分裂性物質は生成されず、核拡散リスクは低いとされています。

核分裂発電は1950年代に商用化され、現在世界の電力の約10%を供給しています。核融合発電は2030年代のITER本格運転、2050年代のDEMO原型炉を経て、商用化は2050年代以降と見込まれています。2020年代には民間企業の参入も活発化しており、開発の加速が期待されています。