ディスラプション
ディスラプション(disruption)は、トカマクでプラズマ電流が急激に失われ、閉じ込めが突然崩壊する現象です。大電流を利用して閉じ込めるトカマク固有の課題として知られています。
やさしい定義(高校レベル)
Section titled “やさしい定義(高校レベル)”トカマクは、プラズマ自身に流した大電流が作る磁場を閉じ込めに使っています。ところが、なんらかのきっかけでプラズマが不安定になると、この電流と閉じ込めが数ミリ秒という短い時間で一気に失われることがあります。これがディスラプションです。
たとえるなら、コマが高速で回っている間は安定して立っているのに、あるとき急にバランスを崩して倒れてしまうようなものです。倒れる瞬間に、蓄えていた大きなエネルギーが装置の壁へ一気に押し寄せるため、装置を傷めるおそれがあります。
詳しい定義(学部レベル以上)
Section titled “詳しい定義(学部レベル以上)”ディスラプションは、大きく 2 つの段階に分けて理解されます。
1 つ目は熱クエンチ(thermal quench)です。不安定性が成長してプラズマの閉じ込めが破れ、プラズマが蓄えていた熱エネルギーが 1 ミリ秒程度で壁やダイバータへ放出されます。プラズマ温度は急激に下がります。
2 つ目は電流クエンチ(current quench)です。温度低下でプラズマの電気抵抗が上がり、プラズマ電流 が数ミリ秒から数十ミリ秒で減衰します。電流の急激な時間変化 は、装置の導体に大きな渦電流を誘導し、それが磁場と作用して強い電磁力を生みます。
さらに、電流クエンチの過程で生じる強い誘導電場が一部の電子を光速近くまで加速し、逃走電子(runaway electrons)と呼ばれる高エネルギー電子ビームを作ることがあります。逃走電子が局所的に壁へ当たると、深刻な損傷を与えるおそれがあります。
核融合における役割
Section titled “核融合における役割”ディスラプションは、プラズマ電流を閉じ込めに使うトカマク固有の課題です。ITER のような大型装置では、蓄積エネルギーが大きいほど熱負荷、電磁力、逃走電子の影響が深刻になります。そのため、不安定性の兆候を事前に捉える予測と、大量のガスやペレットを入射してエネルギーを一様に分散させる緩和(disruption mitigation)の研究が、実用炉の設計で重要な位置を占めています。ステラレータがプラズマ電流を必要としない方式として注目される理由の 1 つも、ディスラプションが原理的に起きにくい点にあります。